2012年9月26日水曜日

料理民俗学入門/Fedor,



 ※1953年11月21日に執り行われた結婚式の餐食メニュー



『料理民俗学入門』 
著:イヴォンヌ・ヴェルディエ 訳:中沢新一 (A6版/80P)
この本はフランスの人類学者のクロード・レヴィ=ストロース先生のお弟子さんにあたるヴェルディエ女史によって書かれた料理民俗学に関する論文です。
フランスのノルマンディ地方料理の分析を行っている本書では、日常の食事、その四季の変化、結婚式やお祝いごとの日にどのように食べ物が振る舞われ、それをどのように享受していたのか考察しています。
金曜日はみんなが「痩せる」曜日であったり、「パンの日」と呼ばれる土曜日は日曜日の祝祭を結びついていたりと、食べ物に結びつく人間の行動がこんなにも深いことに驚きます。

−自然界で育ったものを収穫し、食す、という営みは、何万年もの間繰り返され、多種多様な知恵と工夫が蓄積されてきました。その根っこをつかみ、未来に生かしていくためのよい導きになる、という思いで刊行しました。−(出版社より)


『Fedor,』
著:岡尾美代子・大森伃佑子 写真:高橋ヨーコ・藤田慎一郎(パン)
「ハバロフスクへ、大森さんと岡尾さんが行ってきました。パンを探しに。
さてさて、はたして、2人はどんなパンと出会ったのでしょうね。
おおきな国への、ちいさなパンの旅。始まります。」
こんな言葉からはじまる本書は「Olive」でご活躍だったスタイリストの岡尾美代子さんと大森伃佑子さんが、「パン」をテーマに作った本です。
ロシアのパンやパンをモチーフにした小物、千疋屋のフルーツサンドから、パン・クチュールレポートまで、「パン」にまつわるお話が盛りだくさんです。
かわいくておいしそうな写真がたくさん散りばめられた、おとぎ話のような「パン」の本でした。








山の組曲/−新選− 山のパンセ




『山の組曲』
編者代表・串田孫一 創文社 1961年
初版 ヤケ・シミ・汚れ・スレ・ヨレ・破れ有
9人による9つの随筆、彩画や版画、そして写真とともに、それぞれ好みの題目を分担して山に対する思いが表現されています。
この本は「山のABC」という名著の延長の形でできています。
ページをめくるたびに目に飛びこんでくる、いろいろな山の表情はどこか懐かしく暖かい気持ちにしてくれます。
あとがきには、あえて地名が入っていないのは、具体的な地名による束縛を避け、いつか、どこかであなたが見たような気のする遠い世界へ、自由に入り込んで頂きたい。と記されています。


『−新選− 山のパンセ』 岩波文庫
詩人・哲学者の串田孫一の山をめぐる随筆集。
読み進めるうちに、詩的な文章で綴られた山々の表情をとおして、自然の優しさや厳しさ、美しさを教えてくれます。山を愛おしく感じる1冊。


『富士山』 毎日新聞社 昭和54年







 

グランヴィル 花の幻想




Taxile Delord 著 J.J. Grandville 画 谷川 かおる 訳  八坂書房、1993年 少シミ、スレ有

動植物に託して人間界を諷刺した19世紀フランスの人気画家グランヴィルの描く変身幻想画と親友ドロールのテクストによる擬人化された花々の不思議で妖美な世界。大人のメルヘンの世界です。
解説にルイス・キャロルが「不思議の国のアリス」を生み出す霊感源にもなったと記されていますが、まさにアリスが鏡の中の家を出て迷い込んだ庭で出会ったおしゃべりなお花達の世界が繰り広げられている感じです。


 ※ツバキ(左)とキンセンカとマツムシソウ(右)



2012年9月24日月曜日

鼻行類/平行植物




生物系三大奇書のうちの2冊です。



『鼻行類』−新しく発見された哺乳類の構造と生活−
ハラルト・シュテュンプケ著 思索社 1987年4刷
動物学論文のパロディ作品
想像上の生物である小獣である鼻行類(びこうるい、架空の学名:Rhinogradentia、別名:ハナアルキ[鼻歩き])をあたかも事実であるかのように解説している寄書。

『平行植物』
レオ・レオーニ著 宮本淳訳 工作舎 1980年/新装版
レオ・レオーニの同名の著作に登場する架空の植物群である。「時空のあわいに棲み、われらの知覚を退ける植物群」と定義され、幻想博物誌の類、鼻行類のような架空の生物の系譜に属する。



私には、読んでも読んでも何がなにやら訳がわからなくなるばかりですが、平行植物の「大きさと知覚−遠近法を裏切る植物−」の章は何となくリアリティを感じてしっくりきたのを憶えています。
フシギネ。という植物には以下のような説明が記されていました。

− 日本の生物学者上高知がクモデの花々の間に発見した平行植物。
遠くから見ても近くに寄っても同じ大きさに見えるという奇妙な性質がある。
植物が空間を歪めるのか、あるいはわれわれの知覚が異常を起こすのか? −

魔法―その歴史と正体(世界教養全集20)



K.セリグマン著 平田 寛/訳 平凡社 1961年
初版 シミ・ヤケ 函イタミ・シミ有

まず、この函の絵に魅かれました。
中をペラペラとめくると、資料として集めにくい 大量の図版が載せられています。
それを眺めるだけでも十分に見応えがあるのですが、内容も魔術の歴史から錬金術・悪魔・魔法・呪術・儀式そして占星術や手相術までのたくさんの内容を簡潔にまとめてあるので、もともと知識の乏しい私も楽しく読めました。そして箇所カ所に様々な歴史上の書物や著名人の言葉が添えられているのも興味深く感じました。


− 私の書物は、私がこの世から去った後の方が、私の生存中よりもいっそう役だつだろう −(ノストラダムス)
− 言葉は虚空の中へは落ちず −(『光輝の書』 文字の呪術より)


ちなみに函の表紙の図は「隠された宝物を指摘する悪魔」、だそうです。





保育社カラーブックスシリーズ

 




保育社が発行された、文庫版のカラー小百科シリーズ。
文庫サイズで持ちやすく、たくさんのカラー写真が私たちを楽しませてくれます。
写真の色合いやデザインがどこか懐かしく感じられます。
まさに“読む文庫”というよりは“見る文庫”。



 


2012年9月23日日曜日

GEORGIA O'KEEFFE




10年以上前に初めてオキーフの絵を目にして私は一瞬にしてその魅力に取り付かれました。
もっとオキーフの事を知りたいと、伝記を手にいれました。
知れば知るほどその魅力に取り付かれました。
モチーフとして描かれる花・骨・摩天楼、どれも素敵ですが、とりわけ私が魅かれるのは、「頭蓋骨」の数々です。

「とくに骨の穴ーその穴から覗けるものーに興味を感じた。世界に大地よりも空が多くあると感じたひとがよくするように、遮光を遮るかたちで骨を空に向けたときに穴から見える青がとくにおもしろかった」(ジョージア・オキーフ)



夢のある部屋




『夢のある部屋』 
澁澤龍彦著 装幀・挿絵野中ユリ、桃源社、昭48年
初版函 133頁 汚少難有 函シミ有

本書の第一部は筆者が女性誌の「ミセス」に1969年代に連載したものであり、第2部は様々な雑誌に記載されたものから著者が選んだものです。
あとがきには、出版元から「環境のイメージ」と題されたが、筆者が自分に合わないと「夢のある部屋」と改めたと書いてあります。
目次には「飾るということ」「楽器について」「豪華なしろ」「鏡の魔法」「夜を演出する」等々。
日常を取り巻く様々な空間が、この本をめくる度に幻想的な世界へと変わってゆき、とても心地よく感じられました。
私が中でも好きなのは、時間を刻む時計がおりなす空間について描かれた「振子の音」です。

ーただ生活の便利のためだけ道具を使い、使いすぎて寿命がくれば、ぽいと捨ててしまう思想に、私は反対だ。私の好きな道具は、人が見ていない時にこっそり動き出すかもしれないような、あやしい霊の乗り移った道具なのである。ー(「振子の音」より)