『あさって歯医者さんに行こう』
高橋順子 著/株式会社 デコ
ページをめくった瞬間の最初の「黄色いメロン」という作品で、もう、心を奪われました。
全行。
黄色いメロンを食べ終わったら
メロンの皮はカヌーになって
海を恋するふうだった
ガラスのお皿の水面から
スプーンを櫂にして
漕ぎだしてもいいんだよ
わたしはこれから暗い内蔵をかかえて
満員電車に乗り
川を四つ越えて会社に行くんだけど
きみはもうどの辺りかな
七月の光の急流の中を
黄色いかろやかなカヌーは
素敵な言葉の数々を読み終わった後には、何気ない日常がとても輝いて見えるようでした。
とても優しい気分になれる1冊です。